会長室

これからの沖縄小児保健の課題

 本協会は、地域のすべての親と子が健やかでたくましく生きていくことを基本理念とし、 「健全なる社会の発展は、健全なる小児の育成になければならない」という趣旨で、復帰の翌年に設立され、 33年が経過いたしました。当時の沖縄の子どもたちのを取り巻く劣悪な環境のもとで、奮闘された先輩諸氏のご苦労には、 頭のさがる思いですが、当時生まれた子どもたちが30代半ばになり、親として、社会の中枢として活躍される姿をみて感慨ひとしおです。

 その間に、沖縄は大きな変貌をとげ、新たな問題も生じています。 先日、「太る沖縄 むしばまれる長寿県」というタイトルの中央紙の報道には、沖縄の保健医療に携わるものとして愕然としました。 日本動脈硬化学会での豊見城中央病院の田中医師の報告を伝えたものです。

 沖縄では戦後、米軍占領下の影響で食文化の欧米化が進み、肥満者が増えて、1日の摂取エネルギーに占める脂質の割合は、 過去30年以上、全国平均を上回っている。伝統的な沖縄の食事から、外食や洋食などで脂質の多い食習慣へ変化した結果、 全国一の肥満県になっている。今、全県をあげて取り組まないと生活習慣病の増加により、近い将来、沖縄は短命県になりかねない。 そして、時間はかかっても、子どもの時から肥満に対する予防を考えないといけない。

 実は、肥満になりやすい体質は、 子どもの時にできあがるのは、案外知られていない。母乳栄養児は、将来の肥満を予防し、心疾患のリスクを下げることが知られている。 また、過剰な栄養を脂肪としてため込む脂肪細胞は一生のうちに3度の成長期(母体内・乳幼児期・思春期)に、過剰な栄養摂取の状態で増え、 一生減ることはありません。つまり、この成長期に過剰な栄養摂取状態が、白色脂肪細胞を増やし、肥満体質をつくると言われます。 最も、肥満に影響が大きいのは、子どもの時の食生活でしょう。一度、味の濃い・脂質と動物性蛋白の多い食事に慣れると、 二度と薄味の淡泊な伝統食に戻れないと言われます。石川県で生後3ヶ月時から20歳になるまで、追跡した大規模調査によると、 乳幼児の肥満児は、やはり20歳になっても高率に肥満であったという結果があります。子どもの食生活を正しく導くことは、 大人の責任であり、それが、沖縄の誇るべき健康な長寿社会を守ることにつながります。

 これからの小児保健は、 とくに食習慣や心の問題を含め、より質の高いサ―ビスが求められ、保健・医療・福祉・教育分野が互いに連携を図り、 幅広い視点での展開が求められています。

具体的な運動目標として、次の2点です。
1) 母乳保育80%まで高めよう!
2) 関係団体と協力して、子ども肥満予防・生活習慣病予防を県民運動まで高めよう!